スローライフ

初めて見ました。なにがって、「十秒チャージ」ですよ。丸ノ内線の電車のなか、向かい側に座っていた青年がウィダーインゼリーを取り出しておもむろに始めたんです。へこんだ両頬がヴァキュームフ○ラっぽく見えたなんて感想は口が裂けても人にはいえないですけどね。

しかし、1億人総ロハススローライフな今日にあって、「十秒チャージ」はないんじゃないかと思うわけですよ。早死にしますよ。とはいってもまあ、忙しくて時間がないのは仕方がない。ってことでこんなのはどうでしょう。

「十分チャージ」

口のところがすごく狭くなってて、しかもエネルギー効率も悪くてその分いっぱい摂取しなきゃいけないからチャージするのに十分かかる。それでもスローライフな世の中、山に山菜採りに行くよりはずっと早い。スローライフにはスローライフなりの急ぎ方ってのがあってもいいはずです。絶対売れると思いますよ、「十分チャージ」。

あと、前にも同じようなことを書いたことがありますが、よく本屋に、『三時間でわかる〜』って本がおいてあります。なんだか最近は『三十分でわかる〜』ってのも見る気がしますが。しかしスローライフな世の中でそりゃいけません。例えばこんな感じ。

『二百時間でわかるジャック・デリダ

これが、スローライフなりのほどよい急ぎ方じゃないでしょうか。

しかしそれでも、スローっていうのは単に程度の問題ではなく質の問題でもあります。二百時間かかるとしても、そこには最終的にはそれが必ずわかるというような前提がある。もしかしたら、ここに問題があるのかもしれません。スローライフっていうのはたんに速度が遅いだけではなく、何かが成し遂げられうるのかそうでないかがわからないまま、「とりあえずスローにやってみよう」っていう距離の取り方、そういう態度の質が重要なのかもしれません。とすると、『二百時間でわかる〜』もよろしくないということになります。

よく、『猿でもわかる〜』って本がおいてありますが、これは最終的には絶対に「わかる」っていうことを保証しているわけです。本当のスローライフを過ごすためには、そういった保証なくしてスローにやっていかなくてはなりません。だから本当にあるべき本はこういう本でしょう。

アインシュタインならわかる相対性理論

こういう本が出てきてはじめて本当のスローライフが芽を吹き出したということなのだと思います。ほかにも『伊藤真なら受かる司法試験』とか『タイガー・ウッズなら勝てるマスターズ』とか『ビル・ゲイツなら買える一戸建て』くらいのゆるーい本が続々と出版されてくることを、ロハススローライフを信条としている僕としては、切に願っている次第です。