視線

テレビを見ているつまりカメラを通して対象を捉えている視線というのはどういう視線なんだろう新潟のテレビ局のキャスターが震度ロクくらいの与信で震えている中でたった今も揺れていますといっているときに画面が切り替わりテレビ局の屋上にある観察カメラの映像が入ってきてアナウンサーがこれが現在の街の様子ですと冷静な口調で解説する大きなゆれの中で画面を切り替える手つきや判断の冷静さそれに解説を加える口調の冷静さはどこから生まれるんだろうと思ってそれがつまりあの視線なのだテレビを見つめカメラを通して対象をつかむあの視線なのだと思い至る昔向かいの話を考えてみるとたとえば武士が静止の際という極限の状態で大全と自若とした姿勢を保つことができるのはたとえば武士道といった大文字の他者の視線が彼を支えているからに違いないのだが同じようにあのテレビ人たちは視聴者という視線を通して冷静の手さばきを可能としている