考察

 電王戦第一戦感想―「強さ」とは何か

昨晩の電王戦第一戦、菅井五段vs習甦の対局結果は衝撃的でした。習甦はコンピュータ同士での予選では第五位、優勝したponanzaとはかなりの差があったというのは大方の共通認識だったと思います。また今回のレギュレーションでは、出場ソフトは大会時点で開発…

「大文字の他者」へのメッセンジャーとしての「マスコミ」

情報経路の多様化、などということはかなり前に言われていて、新聞やテレビといったいわゆる「マスコミ」の存在感はかつてに比べてばずっと小さくなっている、というのは疑いようのない事実だと思います。経営的に見ても、広告費の全体においてネット広告の…

「アーキテクチャ」と「プラットフォーム」――コミュニケーション的接触についての考察

書こうと思っているテーマがいくつかありながら、わかりやすく書くのが難しくうっちゃっているうちに、ずいぶん間隔が空いてしまいました。今回は「プラットフォーム」という言葉をめぐってちょっと書いてみようと思っているのですが、このテーマについても…

ヒマを巡る哲学的序説

以前、同人誌を出すという知り合いに求められて書いたものの、結局同人誌そのものが立ち消えになり、ずっと宙づりになっていた文章を載せます。マルクスの娘婿であるポール・ラファルグの『怠ける権利』の批判から出発し、、ベルナール・スティグレールの議…

twitterとアテンション・キャピタル

有限なものがあるところには、必ずエコノミーがあります。たとえば鉱物資源であれば、埋蔵量も、発掘に必要な資本(生産資本や労働資本)も、流通システムが許容する流通量も、精製能力も有限であり、さまざまな配分=エコノミーがそこに生じることになりま…

動画コンテンツとコミュニケーション ――テレビからニコニコ動画へ

このところ、メディアとコミュニケーションの関係について色々書いてみているのですが、またその続きです。今回は、動画コンテンツとコミュニケーション、といったより限定的なトピックについて考察してみたいと思います。メディアとコミュニケーションに関…

指標の信頼に足る不確実性について

去る7月11日には参議院選挙の投開票がありました。予想されていた民主党の敗北が現実となり、世間全体があわただしくなっている傍らで、東浩紀氏のtwitter上でのつぶやきがささやかな波紋を呼んでいました。それは、今回の参議院を棄権した、とのつぶやきで…

マスメディアとマスコミュニケーション――twitterについて考える 

最近、twitterなるものにちゃんとコミットしてみようと思い始めているのですが(アカウント自体はかなり以前から取得していました)、同時に、twitterというツールについても考察してみたい、という欲望も日に日に増してきています。少し前の記事でtwitterに…

故障したコンピュータは電気狂人の夢を見るか――物質的脆さについての試論――

以下に載せるのは、知り合いが発行した「クロニック・ラヴ」という同人誌に掲載してもらった文章です。 - 1、フッサール:コンピュータ画面の現象学 この文章を書きだす前に、おそらく一分ほどの間、なにも書かれていないまっさらなワードのシートを眺めて…

 将棋と時間―将棋に見る有限性の考察

つい先日まで、将棋の名人が戦われていました。羽生名人が4連勝で防衛、というニュースを読んだひとも多いかと思います。その羽生名人に挑戦したのは、三浦弘行八段という棋士でした。この三浦八段は、対局中のアクションがきわめて大きな棋士で、手を読ん…

労働問題とか、再生産とか

さきほどテレビタックルで、派遣問題についてやかましくおしゃべりしてるのをちらっと見てしまいました。朝まで生テレビとかでもそうだけど、こういう討論番組を見てるとすごくいやな気分になると同時に、それでもそこで扱われているテーマについて自分でも…

ミもフタもない話をしよう

北田暁大との共著である『東京から考える』のなかでだったと思うのですが、東浩紀が「ミもフタもない話」から出発するという姿勢を強調していた気がします。そこで正確にどのように言われていたかはちょっと思い出せないのですが、なんとなく共感した記憶だ…

構造主義について考える4

id:finalvent氏が「混同」として指摘されてきた部分については、その指摘が要求している「精度」が意味をもつ議論の水準は当然存在するのでしょうが、この「シリーズ」で考えようとしている物事の水準ではそこは大雑把にやって問題はないだろうというのがま…

構造主義について考える3

構造主義について考える1(http://d.hatena.ne.jp/voleurknkn/20070425#p1) 構造主義について考える2(http://d.hatena.ne.jp/voleurknkn/20070426#p1)前回の末尾で、フーコーと構造主義との関係を考える際には、言語/記号というものの位置に注意を向けるの…

構造主義について考える2

前回(http://d.hatena.ne.jp/voleurknkn/20070425#p1)のつづきです。前回はごくごくおおざっぱに、構造主義のメインモチーフを「人間の乗り越え」に見出しながら、しかし構造主義そのものと「人間の乗り越え」のモチーフとの間にはズレが存在し、そのこと…

構造主義について考える1

このところ文章を書くのがどうも億劫になっているのですが、その原因はおそらくちゃんとひとまとまりのある「記事」にしなければ、という強迫のようなものを無意識のうちに保持している事にあるのではないか、と思いました。ということで、もうちょっとゆる…

「物自体」と反証

少し前に、「反証されていない」というステータスについて書きました(http://d.hatena.ne.jp/voleurknkn/20070225#p1参照)。そこでは、「正しい/間違い」という組み合わせと「反証されていない/反証」という組み合わせが根本的に異なっている、というこ…

「反証されていない」というステータス

先日、イアン・ハッキングの『何が社会的に構成されるのか』を読み、全部読み終わったと思ったらあとがきで部分訳だと知って卒倒しそうになったのですが、それはさておき、僕が個人的にもっとも興味を覚えたのは科学の構成の問題について論じている第三章で…

「間違わない」というステータス

ここしばらく、三日に一回は「ダーウィンって偉大だなあ」とつぶやいている僕ですが、進化論関係の本を読んでていつも気になるのはselectionという言葉の訳語です。詳しくはわかりませんが、かつては「淘汰」っていう訳語が一般的に使われていた気がしますが…

ハムレットの饒舌

デリダの『マルクスの亡霊』の英訳を読んでいて気付きました。 シェイクスピアの『ハムレット』の有名なセリフに、"To be, or not to be : that is the question”というのがあります。「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」とか「あるべきかあらざるべき…

シリーズ第一回「歩き煙草」

たまにはまじめなことを考えてみるシリーズ 切込隊長氏のブログで以前、小谷野敦と嫌煙ファシズムとワイネフ氏とミクシーとうんぬんかんぬんという話を読んだのでした。 http://column.chbox.jp/home/kiri/archives/blog/main/2006/10/11_062412.html そうい…

恩寵団地

うちの近所の団地では大規模な建て替えが済んだばかりで、このところ猛烈な引っ越しラッシュが始まっており、そこら中にさまざまな種類のゴミが捨てられまくっていて独特の風情を醸し出しています。僕は駅に行く途上でその団地のまっただ中を通っていくので…

人間の欲望

たまに公務員なんかが痴漢で捕まって新聞に載る。そういう記事を読むたびに覚える違和感があります。痴漢が悪いのは当然です。でも記事を読むと、なにか性的欲望を持つことそのものが悪いという風に書かれているように感じるものがあります。 当たり前のこと…

結婚と運命

何日か前にテレビ番組で、「結婚制度は廃止すべきだ」というかなり乱暴な提案に対して賛成反対を論じあう、というバラエティー番組をやってました。太田光が「総裁」をつとめるその番組では、野党の給料は0円にすべきだとかアメリカと一年間国交断絶すべき…

インターネット上では莫大な情報が現れては跡形もなく消えていく、というような印象がありますが、実はキャッシュとかいうのが残っていたりして、消したはずの情報がいつのまにやら出回っている、ということがよくあるようです。ブログ界(ブロゴスフィア?…

返せない贈り物

足長おじさんっていう話がありますが、あれがどんな話なのか詳しいことは知りません。とにかくどこかからお金を送って来るおじさんがいる。少女はそのおじさんに感謝しながらも、それがどんな人なのか想像する。このくらいは間違っていない気がします。 さて…